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【まち】あらすじとネタバレ感想 小野寺史宜 祥伝社

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【いえ】を読んで家族を思うそれぞれの気持ちが手に取るように分かったので、前作の【ひと】や【まち】も読んでみたいと思いました。

今回は【まち】のあらすじとネタバレ感想です。

 

あらすじ

尾瀬 ヶ 原 が広がる群馬県 利根郡 片品 村で 歩荷(ぼっか )をしていた祖父に育てられた 江藤瞬一。
高校卒業とともに上京し、引越の日雇いバイトをしながら荒川沿いのアパートに住んで四年になる。
かつて故郷で宿屋を営んでいた両親は小学三年生のときに火事で亡くなった。
二人の死は、自分のせいではないかという思いがずっと消えずにいる。
近頃は仕事終わりにバイト仲間と他愛のない話をしたり、お隣の母子に頼まれて虫退治をしたり、町の人々に馴染みつつあった。そんなある日、突然祖父が東京にやって来ると言い……。
ひとがつながり まちができる。
僕にもうひとつ、帰る場所ができた。
人と交わり、強く優しく成長していく若者の物語。

まち 小野寺史宜

 

【ひと】がまだ図書館で借りられていたので今回は【まち】を読むことに。

 

【いえ】の記事はこちら☟

 

jibunnnoikikata.hatenablog.com

 

【まち】のネタバレ感想

一話完結ですが、「人」は繋がっています。

今回は、「筧ハイツ」に住む江藤瞬一君が主人公。

 

続編となる【いえ】を先に読んでいるので、江藤君のその後は分かるのですがそこはお楽しみ。

江藤君

江藤君は小学校3年生の時に両親を火事でなくしています。

江藤君の両親は江藤君を助けるために亡くなったのか。

実際の所は分かりません。

 

それでも江藤君を助けるために両親は必死だったということは、わかります。

江藤君のことを守るために。

 

両親の代わりに江藤君を育ててくれたのは、父方の祖父。

じいちゃんの仕事は「歩荷(ぼっか)」

食料や燃料などの必要物資を麓の問屋から山小屋へと運ぶ仕事です。

60キロもある荷物を担いで山道を登る仕事は想像しただけでもしんどい。

荷物が多い時は100キロ越えになることも。

そんなじいちゃんに育ててもらった江藤君は心優しい青年です。

 

高校を卒業して村を出て東京に行くよう祖父が背中を押してくれ、都会で1人で住んでいます。

そんな江藤君の仕事は引越しのお仕事。

まだ自分が何をしたいのか決まっていないので、コンビニの仕事を辞めて身体を動かせるパートの仕事に就いたのでした。

 

引越しの仕事に就く人はさまざま。

その中でも半年がっつり働いて半年海外を放浪する人もいるのですがそういう働き方っを、自分が今若ければやってみたかったなと思います。

 

【まち】では江藤君が出会う人とのふれあいや江藤君の人柄がわかる内容です。

 

両親を火事で亡くしているせいか火を扱う事が苦手な江藤君。

口数は少ないけれど、身体が大きいのでとにかく目立つ。

最初に言われるのは「大きいね~」そこから会話が始まるのですが。

前いたコンビニの同僚との会話や今いる引越しのバイトで知り合った友人や近所の若者やアパートの隣人たち。

 

荒川の河川敷は近所に住む人の癒しの場となっているのですが、想像だけでも行ってみたくなるような場所です。

 

得三さん

ここで色んな人との出会いがあるのですが、例えば下の階に住む得三さん。

奥様を亡くし、1人暮らし。

娘さんが1人います。

娘さんは大手の印刷会社に勤めており、夫の玉男さんはグラフィックデザイナー。

礼亜(れいあ)ちゃんという中学二年生になる娘さん(得三さんのお孫さん)の3人家族。

娘さんには一緒に住もうと言われていますが、奥様と過ごされたこの【まち】を離れるのを少しためらっている。

 

彼が江藤君にいうセリフ

「ただやることが大事なんだよ。いちいち理屈をつけたりしないでさ。やっちゃえばいいんだ。そうすれば、何だって身にはなるんだから」

説教じみたって反省されるのですが、良い言葉だなぁと思います。

「すぐやる。」これが大切なんですよね。

 

じいちゃん

どれも江藤君の周りの人は良い感じの人ばかりで、人に恵まれているなぁと読んでいて思いました。

そんな江藤君も人の役にとてもたっているのですが、これは育ててくれたおじいちゃんがそう教えてきたから。

「ひとを守れる人間になれ」

 

カッコいいですよね。

江藤君のお父さんや、お母さんが身をもって江藤君に教えてくれたことです。

心にジーンとくるものがあります。

 

私は、人のお世話にはなっているけれど、守れる人になっているだろうか。そう考えるとあまり役に立てていないのかもしれません。

少しでも役に立てるよう、毎日過ごしています。

 

そんなある日、じいちゃんが東京へやってくると言います。

江藤君はいつおじいちゃんが訪ねてきてもいい様に、2ルームの部屋を借りていました。

そんなおじいちゃんは年をとったせいか、痩せたように思う江藤君。

それでも、精一杯おじいちゃんをおもてなす江藤君、そして江藤君を思いやるじいちゃんの姿。

愛情深くてお互いを思いやる姿が自身の家族と重なりました。

 

江藤君にとってのお父さんはじいちゃんにとっての息子にあたります。

大切な人を火事でなくしたじいちゃんの気持ちを想うと胸が痛みます。

残り少なくなった自分の最期を知っていて最後まで孫のことを気にかけるじいちゃん。

この気持ち痛いほど分かります。

私には孫がいませんが、もし同じ状況だとしたら私もじいちゃんと同じように行動すると思います。

 

身内でも何でもない人の長所を素直に認め、自分ではなくその人のようになれと言えるじいちゃんのような人に、僕はなりたい。

 

じいちゃんに育ててもらった江藤君もまたカッコいいなと素直に思いました。

 

彩美ちゃん

アパートの隣に住む彩美ちゃん。

虫が苦手で男性の人も苦手なのに江藤君だけは別。

君島敦美さんの娘。

母親である君島敦美さんは、公務員の夫のDVにより離婚。

シングルマザーで江藤君のアパートの隣人。

江藤君が隣の部屋のゴキブリを退治した事がきっかけで仲良くなります。

時々江藤君におかずのおすそ分けをしれくれて江藤君は助かっています。

 

彩美ちゃんと江藤君との会話がかわいい。

彩美ちゃんのお母さんも隣人が江藤君だったら気持ち安心するよなぁと母親目線で思う私。

 

郡唯樹(こおりゆいき)君

まじめで頭が良い。

高校生。筧ハイツの隣の隣に住んでいる。(隣は大家さんの家。)

両親は仕事の関係で北海道にいるため、現在1人暮らし。

両親と郡君で話し合って決めたそう。

父親は東大出身で大手航空会社で働いています。母親は以前から北海道に住んでみたくて父親と一緒についていくことに。

郡君は学校もあるので、地元に残って高校生活を楽しんでいます。

高校生の子を1人にしてと思ってしまう私ですが、しっかりしている子は問題ないのかもしれないですね。

両親も時々帰って来ているみたいだし、郡君の両親のような大らかな人が羨ましく思いました。

まぁ、お金があるから出来ることかもしれませんね。

郡君とは、たまたま引越しのバイトで一緒になり、話すようになり仲良くなります。

 

野崎万勇(のざきまんゆう)

引越しバイトの元同僚。

曲がった事が嫌いでケンカっ早い。

社員に手を出したことから登録抹消される。

理由は社員から女性を守るため。

どんな理由であれ、手を出すのはいけないことだと江藤君はじいちゃんに言われている。手を出して良い時は自分の身に危険が迫った時。

そして、元同僚に仕事の紹介を持ち出す江藤君。

正直に真剣に話す姿はかっこよすぎると思いました。

 

江藤君の両親

自宅兼職場が収斂(しゅうれん)火災となる。

原因は、調理用のステンレスボウル。

それが凹面鏡の役割を果たし、陽光を一点に集中反射させ、火事となってしまう。

たまたま友達の家に出かけていた江藤君を家にいると思い込んだ両親は江藤君を助けるべく自宅へ戻ったと思われる。

 

【まち】

いえ 小野寺史宜 特設サイト

【まち】ってこんなまちなら住んでみたいとも思う位。

人が良くって景色も良くって。図書館も近くにあってレトロな喫茶店もその店主やコロッケ屋さん等々。

こうやって読んでいると私は昭和が好きなのか。と思ってしまいます。

今よりも不便なはずなのに、人とそんなに関わってもいないけれど、近すぎず遠すぎず誰かの為に役立っている。

そんな【まち】の良さがこの本から伝わってきました。

 

さぁ次はいよいよ本屋大賞第2位となった【ひと】です。

図書館に行くのが今からワクワク。

 

【ひと】

たった一人になった。でもひとりきりではなかった。

両親を亡くし、大学をやめた二十歳の秋。

見えなくなった未来に光が射したのは、コロッケを一個、譲ったときだった。