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【うたう】あらすじとネタバレ感想 小野寺史宜 祥伝社

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図書館で見つけた小野寺さんの新刊【うたう】

題名が三文字になっていたので(何か変わったのかな)と思いましたが今回は【ひと】や【まち】とはつながりがなく、平井を離れて中野が舞台でした。

それでは【うたう】の好きなセリフと感想です。

 

【うたう】のあらすじ

わたしは母を傷つけた。たった一人の肉親を、言葉のナイフで――。
あれから13年、後悔ばかりで大人になった。
でも、孤独に負けずにいられたのは、母の、仲間の、「うた」 があったから――。

シリーズ累計54万部突破!『ひと』 『まち』 『いえ』に続く感動の青春譚

母がわたしを産んだ歳になった。今、わたしに、湧き出るものがある――。
27歳の古井絹枝には、晴らすことのできない後悔があった。中学生の頃、地域の合唱団に所属する母に「一緒にうたおうよ」と誘われたものの、撥ねつけてしまったのだ。母が秘めていた想いも知らずに・・・・・・。
大学時代、絹枝はバンドを組んでいた。
ギター担当は伊勢航治郎。バンド解散後もプロを目指したが芽が出ず、だらしない日々を送っていた。
ベース担当は堀岡知哉。バリバリ働く妻がいるが、自分はアルバイトの身で、音楽への未練も僅かにある。
ドラムス担当は永田正道。大学卒業後、父が越えられなかった資格試験の壁に挑もうとするが・・・・・・。
かつての仲間が、次の一歩を踏み出そうとする物語。

祥伝社の出版物

 

言葉のナイフは恐ろしい。

そう思っているので、絹枝がどれだけひどいことを言ったのだろうと思いましたが、(私にとって)思ったよりひどくはなかったのでホッとしました。

小説であっても、言葉はなんとなくしこりが残りそうだったので。

絹枝の言葉がナイフなら私は今までもっと傷つく事を言ってきたり言われてきたのかもしれません…

 

【うたう】作者小野寺史宜

千葉県生まれ。2006年「裏へ走り蹴り込め」でオール讀物新人賞、08年「ROCKER」でポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。著書に『ホケツ!』『家族のシナリオ』(小社刊)『みつばの郵便屋さん』『ひりつく夜の音』『近いはずの人』『リカバリー』『本日も教官なり』『それ自体が奇跡』『夜の側に立つ』などがある。

【うたう】の好きなセリフとネタバレ感想

読みながらあれ?なんだかいつもと違う感じ。

どうしてだろう。

「ひと」「まち」「いえ」に続く本【うたう】だと思っていたのですが、あまりシリーズ感は感じられませんでした。

関東に馴染みがないので街がよく分からないというのもあるかもしれません。

街の説明が多かったので、ある程度想像は出来るのですが、「ひと」「まち」シリーズのように同じ場所ではなかったからかもしれません。

今回は平井を離れて、中野が舞台でした。

 

大好きな「おかずの田野倉」がなかったので「おかずの田野倉」の他に安くて美味しそうな食べ物を頬張る所も読みたかったです。

 

【うたう】も読みやすく温かかったのですが「いつもほどの面白さ」ではなかったのが少しだけ残念でした。

話の内容は小野寺さんらしく、今回もどこにでもいるような人々のお話。

今回はアマチュアバンド「カニザノビー」の4人の物語です。

 

ボーカルの古井絹枝(ふるいきぬえ)、ギターの伊勢航治郎(いせこうじろう)、ベースの堀岡知哉(ほりおかともや)、ドラムの永田正道(ながたまさみち)。
バンド名「カニザノビー」の意味は、かに座のB型。

 

エピローグからボーカル絹枝がメインなのかなと思っていたら割と全員が主人公。


個人的には絹枝の激動の十数年をもっとじっくり追いかけたかった気もします。

 

途中出てきた女性ドライバーはタクジョ!の夏子かな?と期待しながら読んだのですが説明は特になかったので夏子ではなかったのかもしれません。

こういった所に違和感を感じたのかなと思いました。

 

jibunnnoikikata.hatenablog.com

 

それはともかく地に足のついた感じの淡々とした語りはいつものように心地よかったです。


自分にとって好きなもの、大切に想う事がある事で救われたり前を向けたりするのは毎回好きです。


ただもう少し盛り上がる、心騒ぐエピソードがあれば良かったかなぁ。
全体的にモヤモヤして終わる話の印象でした。

 

「タダだから図書館に行くみたいに、タダだからうたうの?そういうの、貧乏くさくて、いや」

帯に書かれているほどお母さんは傷ついてないと思います。

中学生で特に興味がなかったら、恥ずかしいと思う年頃だしお母さんにしてみたら、母親が参加している場所へ娘が見学に来てくれただけで嬉しいと思いました。

 

同性が見ていても(かわいいな)と思う仕草を自然に出来る人ってかわいいです。

「何、カノジョ?」

「そう」

「ほんとに?」

「ひ~っ!」と八汐が声を上げる。両手を頬に当てて。

 

八汐はこの時中学生できっと先輩の事が好きなんだと思います。

それでこういった仕草をしたのですが、想像しただけでもかわいい。

 

ベース担当の堀岡君は学生の頃付き合っていた彼女がいましたが、なんとなくで付き合っていたので、別れても特に傷もつきませんでした。

要するに、ぼくらはちゃんと付き合っていなかったのだ。ぼくらはというか、ぼくは。

 

カノジョは向き合おうとしていたかもしれないけれど、本人は音楽にしてもベースの事にしても説明しても分からないだろう。という思い込みで説明しなかった。

付き合うって人によって捉え方も感じ方も考え方も違うから難しい。

人の気持ちって本当にわからない。

分からないからとことん向き合わないといけないけれど、それがとてつもなく難しい。

ベースの堀岡君は昔から受け身の生き方。

結婚してからは、相手を支える。受身っぽいけれど能動的に支えたいと思うようになります。

なんか良いな~と思いました。気づきだなと思いました。大きな一歩だと思います。

 

ドラムの永田君は、行政書士の資格を取る為に勉強しています。

生活費は家庭教師のアルバイト。

春田くんの所ではいつもお菓子と紅茶を用意してくれます。

ここでいつも春太くんのお母さんがお茶とお菓子を出してくれる。

これはあくまでも福崎家のご厚意。基本、僕ら家庭教師は飲食物の提供を受けないことになっている。用意をして頂く必要はないと、ホームページで会社は明言している。

それでもやはり、用意してくれる人はいる。春太くんのお母さんもそうだ。わからないでもない。結局は人と人。必要ないと言われても、そうせずにはいられないのだ。

お茶やお菓子を出さないほうが落ち着かないのだろう。僕の母も同じだと思う。

私もそうです。性格なのかそういう家庭で育ったのか。自分が納得してやっている事なんですけどね。

 

母親が亡くなり、伯父夫婦のもとで暮らすことになった絹枝。

ありがちなイジメもなくとても親切にしてもらった所は良かったと思いました。

そこには従兄になる英秋くんがいました。

仲が良いわけでも悪いわけでもないけれど、英秋くんに対してはずっと、絹枝がきたことで邪魔したみたいになってごめんねと思う気持ちがありました。

それでも英秋くんは「おれが同じ立場になってたかもしれないし」とさらっと言ってくれます。

その言葉だけで絹枝は充分ありがたかったのでした。

私が同じ立場なら、さらっと言えるかな。

言った事で相手を傷つけないかな。とか余計な事考えて、結局何も言えないような気がします。

大学のバンドのメンバーだった4人は今でもお互いの連絡先はとってあります。

何年経っても当時に戻れるのが昔の仲間。

彼らは大人になり気づき、前を向いて歩き始めていくのでした。

 

テクテク歩く。道中長いけどかまわない。むしろちょうどいい。

人生もおなじ。テクテク歩いてみる。年齢は関係ない。

気づいた時からやってみよう。そう思いながら毎日を過ごしています。

 
実際に「カニザノビー」という作者の本があるらしい。
物語とはつながりがないそうですが、読んでみたいです。