カバ子の日記

生きていてくれるだけで嬉しい

【書評&感想】童話セラピー お姫さまと王子さまが中年になっても幸せでいるためには…

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ガネしゃんです。いつもご覧いただきありがとうございます。

 

 めでたし、めでたしで終わったその後、王子様が禿げ、お姫さまが中年になるとどうでしょう?家族への責任や仕事の要求を満たそうと奮闘する終わりのない日々のなか、疲れきり、とまどい、人生の途上で立ちすくんでしまうかもしれません。

 

そんな時、「昔ばなし」という思いがけない場所に魔法と叡智が用意されていたら??

 

30歳を過ぎるころから直面する心の危機に多いに役立つ16の物語です。

目次

第一部 現実を見つめる

1.魔法の喪失

 こびとと靴屋グリム童話より)

2.若々しいりそうとの訣別

 魔法の財布(韓国)

3.喪失を受け入れる役割の逆転

 漁師と人魚(ウェールズ

第二部 男女の逆転

4.役割の逆転

 がんこな夫、がんこな妻(ペルシャ

5.中年の女たちの解放

 王さまになった妻(中国のウイグル文化圏に伝わる話より)

6.両性具有的な柔軟さ

 リュート弾き(ロシア)

第三部 死と運命に向き合う

7.中年にとっての死

 死すべき運命の王さま(中国)

8.死と心の旅

 死にたくなかった男(日本)

9.運命と中年

 運命(ダルマチア

10.悟りによる受容

 運命よりも強くなりたかった王さま(インド)

第四部 再生への道しるべ

11.実際的な知恵

 賢い答え(ロシア)

12.灰汁の挑戦を受ける

 ソロモンの忠告(イタリア)

13.中年のユーモア

 告口棒(日本)

14.苦痛と癒し

 石打ちの刑(モロッコ

15.再生に必要なエネルギー

 骨次(日本)

16.命の源泉を知る

 黄金の木(インドにおけるユダヤの話より)

  

 作者

アラン・B・チネン
サンフランシスコとカリフォルニアで診察するユング精神分析医。世界中のおとぎ話を集めて分析し、心理臨床に役立てている。成人気の心理への解釈を施す。

 現実を見つめる

おとぎ話と言うとストーリーは似たり寄ったりです。まず若いヒーローとヒロインが出会い、恋に落ち、恐ろしい敵をやっつけ、結婚してその後いつまでも幸せに暮らす。しかし、この本に集めた物語はめでたし、めでたしで終わったおとぎ話のその後の展開が描かれています。

 

ここでは3つの物語が紹介されています。

こびとと靴屋グリム童話)から魔法の喪失

貧しい靴やの夫婦が寝ている間に小人たちがやって来て新しい上等の靴を作ってくれる。けれど2人が小人たちにプレゼントを渡したあくる日から子供達は来なくなってしまいました。けれども、靴屋の夫婦は仕事を再開し、商売は繁盛し2人は幸せに暮らしました。

魔法の喪失をテーマにした童話には、ほとんどが、若い登場人物たちが魔法の宝を失うのはたんに強欲な邪悪なまねをしたからに過ぎないのですが、ここでは、靴屋は強欲ではなく、夫婦は感謝の気持ちを知っていてとても気前がいいです。それでも彼らは魔法を失ってしまいます。

なぜか?

そのなぜかを本で詳しく説明されています。小人たちが姿を消すという魔法。小人たちとは何を意味するのでしょうか?

魔法の財布(韓国)から若々しい資料との訣別

この物語は、貧しい男と女が魔法の宝を手にいれます。しかしその後いつもでも幸せに暮らす代わりに、夫婦は口論になってしまいます。そして…

 

この物語でも魔法の喪失が語られています。食べる為に必死に働きながら、人生のささやかな慰めを夢見ているこの夫婦から私達が得られる教訓とは?



漁師と人魚(ウェールズ)喪失を受け入れる

 この物語は漁師と人魚が恋に落ち、いっしょに夢のような生活を送り始めるところから始まります。しかし魔法を喪失するわけではなくずっと保ち続けているのです。それが、魔法の冒険にふけることによって、漁師と妻は魔法を秘蔵し、子供達はその為に苦しんでしまいます。

 

この物語は安楽への欲求、そうした危険にたいする厳しい警告です。魔法の喪失は無念かも知れませんが、必要な発達段階であり、喪失を拒絶すると悲劇に至る。ただし、この喪失によって魔法は完全に消え失せるわけではなくて、自分自身から自分の家族へ次の世代へと譲渡されていくのです。

 

 男女の逆転

 がんこな夫、がんこな妻

 物語はとうの昔に青春の魔法と恋を失っている夫婦の姿で幕を開けます。彼らの日常生活は、絵に描いたように幸せな暮らしではなく、際限のない議論がやりとりされています。

 

この物語の一番印象的な特徴とは?

お話では、男と女が中年で選ぶ別々の道を滑稽に描いています。

 王さまになった妻

 この物語は非常に内容が濃いお話です。物語は男女が恋に落ちて結婚するところから始まります。ところがその後いつまでも幸せに暮らす代わりに妻は邪悪な王によってさらわれてしまいます。

お話は男性的なものと女性的なものの調和によって終わるのですが、中年期の大切な課題「不安定さ」と「過ち」の調和とアイデンティティが集約されています。

リュート弾き

 この物語は人生において身を固める段階ではなく、その次に来る段階を扱っています。

王さまと仲良く暮らしていたお妃が王さまを助けに旅に出ます。彼女は夫を救うために勇敢にも旅に出るのです。彼女の行動は伝統的な女らしいやり方を選びません。

 

中年の女性が子育てを終えた後どう人生を過ごすのかを考えさせてくれる物語と解説になっています。

死と運命に向き合う

 死すべき運命の王さま

 「死」は中心的問題で、中年の主人公たちは自分の死すべき運命と痛々しく戦っています。現実生活では、しばしば「死」の恐怖が中年の危機の引き金になるし、「死」の恐怖が大きければ大きいほど、動揺は深刻なものに。

死にたくなかった男

 中年童話でも現実においても「死」は重要かもしれません。

人が相手にしなくてはならない敵はそれだけではありません。

「死」に劣らず強大でおそらくいっそう受け入れがたい、もう一つの力が人生には存在します。

それは「運命」です。

  再生への道しるべ

「 癒し」または「破壊する力」は中年になって完全に開花するのだそう。

 

若い人の場合は、怒りや欲望といった悪とされる強力な本能を抑えてしまうからです。

 

中年になると、青春の抑圧は消えてしまい、野性的で荒々しいエネルギーがあふれ出します。はじめは爆発し恐ろしく感じますが、このエネルギーは癒しに必要な心的エネルギーをもたらしてくれるそうなのです。

まとめ

 知っている童話もあれば、韓国、中国、ロシア等、耳慣れない童話もあり楽しめました。

物語は現実の奥深くから~想像力と創造の源泉から生じている。その泉こそ人間の精神である。そして、それが中年童話の究極のメッセージなのだ。すなわち中年期に襲い掛かる逆転や混乱のまっただなかでも、洞察、再生、癒しが用意されているのである。

 単行本ですが、読み応えがある本です。少し難しいと感じましたが沢山の物語が読めて良かったと思います。興味のある部分から読まれてもいいと思います。