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【子育てはもう卒業します】あらすじとネタバレ感想 垣谷美雨 祥伝社

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この物語の主人公は3人。

故郷を離れ東京の大学で知り合い、お互いの悩みを語り合ってきました。

時には言えない悩みもありますが、考え方次第で前に進んでいける。

垣谷美雨さんの作品はどれも面白く、最後はいつも前向きに終わるので今回もどの時点で子育てを卒業するのか?どんな終わり方をしていくのか気になり手にしてみました。

 

【子育てはもう卒業します】かんたんなあらすじ

息子を憧れの学校に入れるため必死なお受験ママの淳子、
「堅実な職業に就いて」と娘の就活に口を出す明美
勘当同然で押し切った結婚を後悔する紫。
十代で出会った三人は故郷を離れてから数十年、様々な悩みを語り合ってきた。
就職、結婚、出産、嫁姑問題、実家との確執、子供の進路……。
時に、ふと思う。"私の人生、このまま終わるの?"
誰かのために生きてきた女性たちの新たな出発を描く成長物語。

淳子、明美、紫のそれぞれの生活背景を大学時代から子育て時代と場面が変わっていきます。

【子育てはもう卒業します】作者:垣谷美雨

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『女たちの避難所』『夫の墓には入りません』『姑の遺品整理は、迷惑です』『うちの子が結婚しないので』などがある。

垣谷美雨 | 著者プロフィール | 新潮社

【子育てはもう卒業します】主な登場人物

五十川淳子(いそかわじゅんこ)

北海道出身

教育費を捻出するため月15万の家賃を浮かし、夫の両親と同居するお受験ママ

舅、姑の他独身の義姉2人と同居

夫とは修英大学の同級生

龍男(たつお)と翔太郎(しょうたろう)の子どもがいる。

 

国友明美(くにともあけみ)

高知出身

娘には一生続けられる仕事に就いてと願う専業主婦

大学を出たけれど、納得できる職が見つからず悶々とした日々を送っている。

1人娘の百花には看護師の道を勧めているのですが…

 

シュベール千代松紫(シュベールちよまつゆかり)

博多出身

親の猛反対を押し切り結婚したことを後悔するお嬢様育ち

大学ではフランス語を専攻していたにもかかわらず、フランス語は話せない。

夫は語学スクールの講師。

1人娘の杏里は赤ちゃんの頃からモデルをしている。

 

【子育てはもう卒業します】あらすじとネタバレ感想

気付かないまま取り仕切っている子育て

この作品は平成25年に出版されました。

2014年に主人公の3人は55歳になっています。子供たちは29歳。

現在2024年なので彼女たちは作者と同じ65歳。

 

物語の主人公たちは私の世代より約15年違います。

それでも今の時代とさほど変わっていない部分もあり読んでいて頷ける所がありました。

主人公の3人はそれぞれに4年生大学を出ているというプライドが少なからずあり、そして心配性です。どこの家庭にでもいるそんな主人公たち。

 

淳子の場合

子供たちの教育費捻出のため、月15万円の家賃を浮かし夫の両親と義姉2人との同居を提案する敦子。同居といっても同じ敷地内にある離れを使わせてもらうよう、夫に説得します。

敦子の提案に気を良くした義両親ですが、こちらもまた世間体を気にしています。

「淳太郎が外で働いているんだから、敦子さんは家を守ればいいのよ」

「守る、ですか?」

よく聞く言葉だが、具体的にいうと、何をどうするの?

「私はパートにでても今まで通り家事もちゃんとやりますし、子供たちの宿題も見ますし、もちろん健康状態にも気を配りますし…そいういうことが家を守るという意味ならパートにでたとしても変わりはないわけで…」

「そんなみっともないことやめてくださる?五十川家の嫁がコロッケ屋で働くなんて冗談じゃありませんよ。近所の人になんて言われるか考えてみたことあるの?」

「近所のひとなんて…」何の関係があるんですか?

他人がいったい何をしてくれるっていうんですか?

お義母さん、なんだかんだ言ったって世の中、お金ですよ、お金!

田舎の近所の目というのは怖いです。

それでも働く事をそんな風に思っているんだと思いました。

結婚とは?と思います。

若い子が結婚をしない理由に口では言わないけれど、まだこのような嫁というこだわりを持っている見えない何かがあるのかもしれません。

下町に住む母親と高級住宅街に住む母親。

上から下まで服装をチェックされる姿。

名簿で住所を確認しなくても地域に住んでいるだけで分かってしまう、持ち物や服装からだけではなく、物腰や言葉遣い、雰囲気からわかってしまうもの。

そして何より、高級住宅街から通う児童のほとんどは中学受験をするということ。

格差が広がる中、結婚や子育てとはいったい何なんでしょうか。

明美の場合

大学4年生の娘は就職の内定を貰えていない。

そんな彼女が美人は就職しやすいのかと聞いてきた。

(だから言ったじゃないの、看護学科に行けって)

喉元から飛び出しそうになるのを抑えた。いまさら言っても仕方がないし、言える立場じゃない。この愚かさ加減は遺伝じゃないかと思う。

「想像してごらんなさいよ。百香が社長だったらどうするかって」

「いい?男の子が2人、面接に来ました。ひとりはアイドルの片山元気にそっくりな爽やかな男子。もう一人はお笑いのオメガにそっくりの肥満体。さて社長の百香はどっちを採用しますか?もちろん学歴も同じだとして」

そうこうしているうちに、百香が内定をもらいます。

本社は香港のブランドショップ店員。勤務地も香港。

そんな百香に1人暮らしをしたこともないような人がいきなり外国暮らしだなんて無理といって反対します。

そして今付き合っている彼との結婚を勧めるのでした。

「結婚?そんなの考えてないよ。私まだ大学生だよ」

「だって、いつかは伊吹くんと結婚するんでしょう?」

「そんなこと、いつ言った?」

「あっという間に歳を取るわよ、伊吹くんを捕まえておかなきゃだめよ」

「結婚、結婚ってなんなのよ。最近のおかあさんなんて、ちっとも幸せそうに見えないけどね」

百香は笑顔を消し、自分の部屋に入ると、ドアをバタンと閉めた。

子どもがどこにいようと幸せならそれでいい。

そう思っているのに、つい子供の頃から口うるさく言ってしまうんですよね。

それに気づくのは人それぞれですが…

親子であっても他人。

自分は自分でいいんだと思えるような人、そうやって子育てをしている人はどれだけいるんだろう。

紫の場合

お嬢様育ちの紫は特に心配症「カモシレナイ」と常に最悪の事態を想定しています。

この部分は私も同じなので気持ちが分かります。

そんな紫の娘が17歳の時に感じた部分にこう書いてあります。

ママンが家族を何からなにまで取り仕切ろうとするのは間違っていると思う。誰だって自分の思ったように生きたいんじゃないかな。私とパパがママンの理想通りにやらないからといって、束縛されたり管理されたりしたら息が詰まる。ママンは、自分が正しいと思っていることが世間の常識だと思っているようだけれど、本当にそうかな。ママンの心の中には、「こうでなければならない」といったルールみたいなものがたくさんある。だけど、それはたぶん古いし、それを私とパパに押し付けるのはちょっと違う気がする。

親というのは子どもがまだ小さい頃危険な事をしてはいけないという事を教える位でその後は子どもが自由に選択出来るようにするだけでいいのに、なんで先回りしたり構ってしまったりするんだろう。

良かれと思った事は全てが悪いわけではないけれど、いつしか子どもの負担になったりします。

母親もまたその母親に同じように育てられているので仕方がないのですが…

時代も考え方も違っていくのに、自分の取り巻く環境が邪魔をしてなかなか思うようにいかないものです。

大学を卒業してもそれを活かした仕事に就けずフランス語学科といっても、フランス語も英語も話せない紫。

結婚してからは、お弁当屋さんでお惣菜を詰めるパートに出ていました。

事あるごとに心配ばかりするので、私と似ているし私の友人達もまた彼女たちと同じような女性だなと思うのでした。

紫の実家は世間体ばかりを気にする家でした。

お見合いの話を持ってこられた時もそう。

「お父さんの言うことば聞かんね。私があとで怒られるけん。」

母はおろおろしていた。いつものことながらうんざりする。母は、父に叱られない為には娘を犠牲にしてもかわまない人間である。言い換えれば、父に叱られないで生きていく事が母の人生の最大の目的だ。

ぞっとしました。そんな生き方は嫌だ。

今も田舎ではそういった考え方があります。

長男だから。長男の嫁。いつの時代ですかと聞きたくなるくらい、未だに独身者に早く結婚しないと等々ズケズケと言う人たちが実際にいるのです。

この本は平成25年に書かれた本ですが、今でも充分通じるなと思いました。

 

フランス人の夫はいつも本音で生きている。

今を楽しみ、最低限の生活で満足できる人です。

そんなレイモンを軽蔑の目で見る紫は学生時代の親友の中で自分だけが結婚に失敗したと思い先行きが不安だと本音を言えない所があるのでした。

 

親だって人間

似たような考えを持った友人の子どもでも、同じ親から産まれた兄妹でも育った環境や持って生まれた性格によって人は違います。

離れて初めて親の気持ちや想いが分かるのだと思います。

そして子供の頃の記憶。

子どもは親が思う以上にしっかりしています。

それを分かっているのに信用できないってなんなんでしょう。

心配しすぎるのも良くないと分かっているのについ心配してします。

見るとつい口を出してしまいがち。

放っておくという意味ではありませんが、お互いに信じ、程よい距離で上手に付き合うのが良いのだと思います。

子育てに失敗も成功もない。

親だって気づくのは何歳になってからでも大丈夫。

気づいた時点で直していけばいい。

誰もが自由。

自分の生きたい道に進めるのが一番。

何度も立ち止まって、耳をすませばいい。

自分の生きる道を信じて。

そう思える1冊となりました。