カバ子の日記

生きていてくれるだけで嬉しい

【ひとりの双子】あらすじと感想

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様々な問題を抱えている複雑な現実を生き抜くためには?

「これが真実なら?」「そうだったらどうする?」

母親の立場になって考えた時、母親はどのように行動し、感じるのか?

「良い母親」「悪い母親」ってどういう事?

そんな日々の問題の残酷さと親子・家族との関係とは何か?

親子の力関係についても考えさせられました。

 

この本を読み終わった後、あなたはどう感じるか?

自分に問いかける事になります。

あらすじ

自分らしくいるために嘘をついた。
それは、許されない罪なのか。

アメリカ南部、肌の色の薄い黒人ばかりが住む小さな町。
自由をもとめて、16歳の双子は都会をめざした。
より多くを望んだ姉のデジレーは、失意のうちに都会を離れ、
みなが自分を知る故郷に帰った。
妹のステラは、その何年も前に、デジレーのもとから姿を消していた。
いまは、誰も自分を知らない場所で、裕福に暮らしているという。
白人になりすまして。

いつもいっしょだった、よく似た2人は、分断された世界に生きる。
だが、切れたように見えたつながりが、ふいに彼女たちの人生を揺さぶる。

人種、貧富、性差――社会の束縛のなかで懸命に生きる女性たちを描く感動長篇。

 

主な登場人物

デジレー・ヴィーン:双子の姉

ステラ・ヴィーン:双子の妹

アデル・ヴィーン :デジレーとステラの母親

レオン・ヴィーン :デジレーとステラの父親

サム・ウィンストン :デジレーの夫

ジュード・ウィンストン:デジレーの娘

アーリー・ジョーンズ :人探しの調査員

ビッグ・シール :保釈金立替業者

リース(テリーズ・アン・カーター):ジュードの友人

バリー :リースの友人

ルイス :バリーの仲間

ブレイク・サンダーズ :ステラの夫

ケネディ・サンダーズ :ステラの娘

ロレッタ・ウォーカー:ステラの隣人 

【ひとりの双子】感想ステラの観点から

時代は1968年。

消えた双子のひとり(デジレー)が故郷に戻ってきた所から始まります。

白人といわれてもおかしくない肌の色が薄い黒人たちだけが住む小さな田舎町に、「青っぽく見えるぐらいの黒い肌の色」をした娘を連れて…

自分らしさ

自分らしく生きると言葉で言うと簡単に聞こえるのですが、実際はたくさんの障害があるように思います。

 

個性というけれど、学校では制服があるし、細かいルールもあります。

ルールがなくても例えば、高校生を見ていると周りの多くが同じ髪型で一見誰もが同じに見えたりします。

 

そうしないと自分だけ浮いてしまうから?

 

周りに合わせているだけなのか、自分がそうしたいのかは分かりません。

 

個性があるから物事についての考え方、見方が異なります。

 

それがあまりにも社会とかけ離れていると、大人も子供も自分らしく生きるということで、はみ出し者にされてしまうのでしょうか?

 

自分の事をどこまで知っているのか?

 

アラフィフの私はそう問われると未だに分からなくなります。

 

子供の前の自分。親の前の自分。夫の前の自分。友人の前の自分等々…

 

誰も本当の自分を分からないのかもしれません。

どれも全部本当の自分なのですが。

 

どの自分で生きていきたいのか?

 

感情を隠したまま見せる普段の姿は見せかけだけなのかも‥

 

人は人の視線が怖いものです。

 

人は社会での立場を保つため自分の感情をどこまで隠し続ける事が出来るのでしょうか?

 

一度嘘をついてしまったら、元には戻りにくくなります。

 

ステラは夫にさえ真実を明かすことは出来ません。

 

「パッシング」それはかつて黒人が白人として生きていくなりすまし。

 

ステラもその1人です。

白人の夫と結婚し、裕福な暮らしをしています。

1人娘のケネディ。見た目は白人です。

当然のように白人として生活しています。

 

ステラは黒人で娘にも黒人の血が半分入っていると知った時、夫は社会はどんな反応をするのか。

 

相手の事を想うと余計に嘘が嘘をよび、深く傷つき、もがき続けてしまいます。

 

自分が生きようとした人生が、家族にとってどうなってしまうのか?

 

私は結婚そのものをそんな深く考えた事はありませんでした。

 

けれどもし自分が「なりすまし」で生きていくと決心した時、子供にどう伝えられるのか?

 

そう考えたら、子供を作らないかもしれません。

「作らない」というより、「作れない」気持ちの方が強いのかもしれません。

 

苦しみを背負うのは、私1人で充分だと考えてしまうから。

 

それが正しいのかどうか正解はないのだけれど‥

 

安心

もしかしたら、将来を悲観して現代を生きる若者もそれに似たような考えを持っているのかもしれないと思いました。

 

少子化と言われている理由を考えた時、将来の不安、貧困の問題、自分らしさを求めた時、子供を産もうと思えないのはなぜか?

 

それは本人だけの問題なのでしょうか。

 

この国で子供を産むのには不安が大きすぎる。

この国に子供を任せられないと思うから、女性が子供を産もうと思えないのかもしれません。

血のつながり

娘だからこそ言えないこと。

 

ステラの気持ちを考えてみました。

 

私だったら…

 

真実を娘に言えるだろうか?

 

今まで胸に押し込めてきた想いをこの真実を娘に伝える事が出来たらどんなに楽になるだろう。

 

何度も何度も自分に言い聞かせてきたステラ。

 

どんな相手であっても対等の人間として「それは間違っている」と思えることはキチンと伝えたい。

 

それが正論だとしても、もし「白人」と「黒人」という立場であったとしたら…?

 

母親とは

若い頃、結婚や出産で幸せになれると思っていました。

けれども、現実はそうではありません。

特に子供は自分の所有物じゃない。

1人の人間として尊重しないといけない。

 

けれども、親はついそれに蓋をしてしまい安全な方へ行かせようとする。

子供が与えてくれる愛は素晴らしくまた親は無条件に子供を愛します。

 

ステラの場合、嘘をつくたびに子供の信頼を失い、孤独を募らせていきます。

もし子供に真実を伝えたとしたら、不安そのものになります。

 

ステラが感じる痛み‥自分が子供の頃経験した時の様に、娘もまた同じ辛い思いをさせる事になってしまう。

 

娘が学校へ行って受け入れて貰えるのか?みんなとなじめるのだろうか?外見が同じでも黒人の血が入っているということで、惨めな思いをしないだろうか?

 

これもまた母親(ステラ)としての苦しみにつながります。

 

そんな事を想像すると、今ある幸せを手放してまで「真実」を娘に伝えられるでしょうか?

 

どれだけ胸が痛むか分かりません。

 

真実を明かすことで、再び残酷な社会と直面するのはあまりにも酷です。

 

しかし嘘を貫き通すためにはもう一つの家族。

自分を愛し育ててきてくれた家族(親・姉妹)を捨てる事になるのです。

 

親が持つ価値観、特徴や外見、人生経験、人種差別な社会や同性愛嫌悪や貧困、その他見ないようにしてきた痛みを再び味わなければならないのです。

 

母とは?母の責任とは?母の権利とは?

1人の人間として、子供とどう向き合い、話し合うのか?

声をあげた時、夫も含め、社会はどう反応するのか?

 

私は母になって母親という意味を子供、友人、親、子育て仲間から教わりました。

 

そして若い頃想い描いていた母親のイメージとは大きなずれがあることも。

 

子供とはかけがえのない存在です。

子供の幸せを願うばかりです。

 

母親という存在が、子供にとって負担になることもあるでしょう。

 

母親としての「正解」はあるのでしょうか。

 

何が母親にとって、そして子供にとって「大切」なのか?

 

これからも、この大きなテーマについて考え続けていくことになると思っています。