湊かなえさんの本は、これまでに何度か読んでいますが、後味スッキリではなくて、市販のカレールーを使用して作ったカレーを食べた後、舌にまとわりつく油の後味が残るような感じがします。
今回の本にはこんなメッセージが書かれてあります。
家にも学校にも居場所のない、追い詰められた子どもたちを待つ未来とは!?
今回は【未来】の本を読んだ感想です。
あらすじ
「こんにちは、章子。わたしは20年後のあなたです」ある日、突然届いた一通の手紙。送り主は未来の自分だという……。『告白』から10年、湊ワールドの集大成!待望の書き下ろし長編ミステリー!!
未来 - 湊かなえ (文庫) | 双葉社 公式 (futabasha.co.jp)
作者:湊かなえ
1973(昭和48)年、広島県生まれ。2007(平成19)年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録する『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、2009年には本屋大賞を受賞した。2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。2018年『贖罪』がエドガー賞候補となる。他の著書に『少女』『Nのために』『夜行観覧車』『母性』『望郷』『高校入試』『豆の上で眠る』『山女日記』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』『未来』『ブロードキャスト』、エッセイ集『山猫珈琲』などがある。
序章
序章から読み始めると、何か問題を抱えた子供たちがバスに乗り込む所から始まる出だしを読んで(一体何があったんだろう?)そう思いながら読み進めます。
本を読む時、まず最初に目次で大体どんな感じかを掴むのですが、ちょっと変わった目次で「?」が多かった様な気がしました。
章子
章子だけ書かれた章は章子という人物がどんな人物か?が書かれています。
未来の自分へ宛てた手紙という名の日記。
手紙風なので、読みやすい気がしました。
読んでいくうちに、章子という人物や周りにいる大人たちの背景が分かっていきます。
エピソードⅠ
ここから頭の中にあったモヤモヤが、解かれていきます。
それぞれの「?」の答えがようやく分かってくるのです。
答えは決して良いものではありませんが、自分の知らなかった世界や近くにこんな世界があるのかという見てみるふりをする大人や社会全体があるんだという気持ちと混ざって複雑な気持ちになりました。
エピソードⅡ
こちらも同じく別の人物から見た答え合わせです。
隠されたそれぞれの秘密が明らかにされていきます。
自分の学生時代を思い出したりしながら読みました。
エピソードⅢ
そうして最後にようやく、本当の章子の家族の秘密が明らかになります。
人として読んでいて辛くなることが多いですが、母親、娘、妻としてそれぞれの気持ちになって読むとまた心苦しいです。
終章
助けを求めること。
ちゃんと話を聞いてくれるおとな。
私にはそれが出来るのだろうか。
今まで私は自分の目に映るものだけで考え、行動してきたのではないか?
そんなことを考えながら、この主人公たちの未来を想いながら読み終えました。
【未来】を読んでのまとめ
回復力とポジティブな考え方
辛い出来事を体験したこと、それによって立ち向かうことで、その経験を充実した意義深い人生への踏み台に変えることができるのではないかとこの本を読んで思いました。
意識する。
これは本当に大切な事だと思います。
例えば、子どもとの散歩。
目的地に行く事だけを考えながら歩いていた事も多かったのかも知れません。
もっとゆとりを持って歩いていると、見えないものを一緒に探せたのかも知れません。
スマホを持ってからは、スマホを見ながら子供に返事をした事が何度もあるかも知れません。
子どもが本当に、向き合って欲しい時に手を差し伸べる事が出来るのかという事は、自分自身にゆとりがあるということ。
知ろうという気持ち。
知って欲しいという気持ち。
行動していくということ。
向き合う事。
知ろうという事は今からでもできます。
今自身が出来ることを、精一杯やろうと強く思いました。