「この本良かったよ」と渡された本。
静かで淡々と書かれた文章はとても読みやすい。けれどその文章の中には厳しい現実が込められていて何度も手をとめてしまいました。
今この世の中で起きている日常。多くの人に読んでもらいたい本です。
【アフガンの息子たち】あらすじ
難民児童と施設職員の交流を描くYA小説
スウェーデンの小さな町にある灰色の建物。高校を出たばかりの「わたし」は、保護者のいない難民児童が暮らす収容施設で働いている。職員は規則と指示に従うことを求められ、帰宅したら仕事のことは考えるなと言われるけれど、アフガニスタンから逃げてきた少年たちと日々接していると、それはとても難しい。「わたし」は、家族と離れ一人で逃げてきた14歳のザーヘルや17歳のアフメド、ハーミドという3人の少年たちと心を通わせるうちに、タリバンへの恐怖やトラウマに苦しむ彼ら、18歳になり施設を出なければならないことを恐れる彼らに寄り添おうとする。
静かな筆致で難民児童の現実と職員の葛藤を描いた、2021年北欧理事会文学賞(YA&児童部門)受賞作。
【アフガンの息子たち】作家:エーリン・ペーション
1992年生まれ。大学で社会人類学を学んだのち、移民局や難民支援施設などでの勤務を経て、2020年に本書「アフガンの息子たち」で作家デビュー
【アフガンの息子たち】翻訳家:ヘレンハルメ 美穂
ヘレンハルメ 美穂は、スウェーデン在住の翻訳家。スウェーデン語書籍の日本語訳を手がけている。
1975年、神奈川県生まれ。国際基督教大学教養学部人文科学学科卒業(1998年)、パリ第三大学現代フランス文学専攻修士課程修了(2002年)[1]、リンネ大学スウェーデン語学学士課程修了(2014年)。
【アフガンの息子たち】あらすじとネタバレ感想
高校を出たばかりのレベッカは、面接の時にある場面を告げられてどう対応するか聞かれます。
「どうすべきでしょうか」と尋ねると、指示通りに仕事をする人だと採用されるのでした。
レベッカの職場で働いている人は命令に従う人たち。
物語は、彼女と1人で生まれ育った国を離れ、海外で難民となった3人の10代の少年とのやり取りを感情は書かれず淡々と描かれてあります。
たった一人でトラウマを抱えながら祖国アフガニスタンから逃げてきた彼らとのやり取りは何とも言えない気持ちになりました。
過去のトラウマからパニックになったり、身体に残る傷痕。スウェーデンに逃れたものの、里親が見つからず、18歳になると強制送還させられてしまう現実。
彼らにとって、「生き方を選べない現実」
最初は命令に従うだけのレベッカでしたが、少年たちと日常を過ごすうちに後半からただの命令に従う人ではいられなくなります。
そんなレベッカの施設員(公の人間)としての自分と、困っている人を助けたい(個人)としての自分との間で葛藤する姿がなんとも言えませんでした。
実際に施設員として働いていた作者にとって、現実はもっと小説以上だったのかもしれません。
答えはありませんが、今もどこかで戦争が起こっているという現実。
自分の国で平和に暮らしていける世界になることを望むばかりです。