自分の子供に人工頭脳を搭載されたAF(Artificial Friend)を親友にしますか?
それとも、もっと…
読みながら、「ミーガン」や「本心」も思い出しました。
どれもAIをテーマにした作品ですが、機械が「心」を持つというのは私達にとってどういう事なのかを考えさせられます。
作者
サー・カズオ・イシグロ(Sir Kazuo Ishiguro OBE FRSA FRSL、日本語: 石黒 一雄、1954年11月8日 - )は、イギリスの小説家、脚本家。長編小説『日の名残り』で、1989年にイギリス最高の文学賞とされるブッカー賞を、2017年にノーベル文学賞を受賞した[2]。日本の長崎県で生まれ、1960年に両親と共にイギリスに移住した。
【クララとお日さま】のあらすじ
人工知能を搭載したロボットのクララは、病弱な少女ジョジーと出会い、やがて二人は友情を育んでゆく。愛とは、知性とは、家族とは? 生きることの意味を問う感動作。
クララに決めて良かった【クララとお日さま】あらすじとネタバレ感想
第1部
物語は1部から6部まで。
1部は人工知能が搭載された主人公の「わたし」クララが店頭の中から見える様子から始まります。
読みはじめはAFが何かが分からないのですが、Artificial friend(人工友達)という意味でクララやその他のAFはお店で売られている商品なのです。
1部はクララとジョジーの出会いからクララがジョジーに選ばれるまでのお話です。
クララはショートヘアで、浅黒くて、服装も黒っぽいフランス人みたいなAF。
旧型のAFですが、他のAF達よりも観察力が抜群で多くを学べるAFでした。
クララは商品の代表として窓際に並べられ、まだ購入されていなくても毎日外を眺めながら多くの事を日々考え学んでいきます。
そんな時ショーウインドウ越しから見つめるジョジーと出会います。
ジョジーはクララを気に入り、必ずクララを購入すると約束するジョジー。
けれども、その日からジョジーは姿を見せないのでした。
密かにジョジーを待つクララでしたが、店長の「子どもの約束はきまぐれ」という言葉に傷つきます。
それでもある日ジョジーが現れて、大切に思っていたとクララを選びます。
第2部
ジョジー家の様子です。
ジョジーの両親は離婚していて、母親と家政婦のメラニアさんがいます。
メラニアさんはぶっきらぼうですが、ジョジーの事をとても大切に思っています。
ジョジーの部屋から見る景色でクララが気になったマクベインさんの納屋は、のちのちとても重要になってくるのですが、後半クララがジョジーを想う気持ちはとても愛情深いものがありました。
またジョジーの友人リックとの出会いも第2部であります。
ジョジーの幼なじみで親友のリックですが、人間社会の格差についても徐々に描かれています。
第3部
ジョジーの亡くなった姉サリーとの思い出があるモーガンの滝へ行った後のジョジーの態度やその母親のぎこちない感じがAFであるクララが察する所はまるで人間のようです。
日々衰弱していくジョジー。
リックとジョジーのやりとりを聞きながら、2人の邪魔をせずジョジーにとって最良とは何か?を常に考えながら側にいるクララは素晴らしいと思います。
こんなに忠実で学習していくAFが今後出てくると思うと、何が良いのか悪いのか正直分かりません。
相性が良いAFがいれば不良のAFも出てくるからです。
少なくともクララはジョジーにとっては最高の親友であるという事は分かります。
第4部
物語の中で「向上処置」と呼ばれるものがでてきます。
この物語の時代でも格差があり、ジョジーに親友のリックは「向上処置」を受けていないので、才能があっても、大学進学は確率的に難しくなっています。そのため、「向上処置」を受けていないものは、子供達のいじめの標的にもなっています。
「向上処置」を受けた者は、安定した生活を保障されているようです。
ただし、「向上処置」はかなりお金がかかること、場合によっては深刻な病気になってしまう事などデメリットもかなりあるようです。主人公のジョジーもその一人です。
愛する我が子の将来を願う親としての選択は胸が張り裂けそうなくらい非常に難しいものだと思います。
第5部
ジョジーの病気が重症化していく姿を見たクララはある決心をします。
クララは大切なジョジーをどうすればいいのか常に考えていて、お日さまに助けを求めます。
そのひたむきなクララの姿は、ジョジーを想う気持ちでいっぱいでまるで本当の人間の様な感じに思いました。
第6部
成長したジョジーが大学へ行く日と同時に役目が終わってしまったクララ。
商品として都会の店頭に置かれ、ジョジーと共に過ごした田舎での暮らし、ジョジーの交友関係が広がったため、自ら移動した物置小屋。そしてどこにいても、クララは観察する事、学ぶ事を怠りませんでした。
最後は、役目が終わったAF達がいる廃品置き場に置かれています。
そしてかつての店長さんとの出会いとジョジーとの日々が最高に幸せだったことを伝え別れる所で終わります。
ミーガンは試作品ですが、クララと同じようなAFだと思います。
こちらは、暴走してしまいますが…
他にもブレードランナーやザ・クリエイター創造者もまた同じAIについて考えさせられる映画でしたね。
ザ・クリエイター創造者のあらすじ
人類とAIの戦争が続く世界、元US特殊部隊のジョシュアは人類を滅ぼす兵器と呼ばれる純粋無垢な超進化型AIの少女〈アルフィー〉の破壊を命じられる。しかし彼は“ある理由”から、アルフィーと共にクリエイターを探す旅に出るが…。争いの果てに、ふたりが見つけた真実とは?
jibunnnoikikata.hatenablog.com
人の心、AIの心、今後の事を考えると切ないような、怖いような複雑な気持ちがからみあって、何とも言えない気持ちになりました。
【ミーガン】のあらすじ
おもちゃ会社で優秀な研究者として働くジェマは、人間のようなAI人形「M3GAN(ミーガン)」の開発を行っている。ある日、交通事故によって両親を失い、孤児となってしまった姪のケイディを引き取ることになったジェマは、子どもにとっては最高の友だちに、親にとっては最大の協力者となるようにプログラムされたミーガンに対し、あらゆる出来事からケイディを守るように指示を出す。だがその行動がやがて、想像を絶する事態を引き起こす。
【本心】のあらすじ
舞台は、「自由死」が合法化された近未来の日本。最新技術を使い、生前そっくりの母を再生させた息子は、「自由死」を望んだ母の、<本心>を探ろうとする。
母の友人だった女性、かつて交際関係のあった老作家…。それらの人たちから語られる、まったく知らなかった母のもう一つの顔。
さらには、母が自分に隠していた衝撃の事実を知る── 。
jibunnnoikikata.hatenablog.com
カズオ・イシグロの本
遠い山なみの光
故国を去り英国に住む悦子は、娘の自殺に直面し、喪失感の中で自らの来し方に想いを馳せる。
戦後の長崎で、悦子はある母娘に出会った。
あてにならぬ男に未来を託そうとする母親と、不気味な幻影に怯える娘は、悦子の不安をかきたてた。だが、あの頃は誰もが傷つき、何とか立ち上がろうと懸命だったのだ。淡く微かな光を求めて生きる人々の姿を描くデビュー作。
王立文学協会賞受賞作。
浮世の画家
戦時中、日本精神を鼓舞する作風で名をなした画家の小野。多くの弟子に囲まれ尊敬を集める地位にあったが、終戦を迎えたとたん周囲の目を冷たくなった。弟子や義理の息子からはそしりを受け、末娘の縁談は進まない。小野は引退し、屋敷に籠りがちに。自分の画業のせいなのか…老画家は過去を回想しながら、自らの信念と新しい価値観のはざまに揺れる。
日の名残り
品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された外交会議の数々。
過ぎ去りし思い出は胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞。
充たされざる者
世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、日程や演目さえ定かでない。ただ、演奏会は町の「危機」を乗り越えるための最後の望みのようで、期待は限りなく高い。
ライダーはそれとなく詳細を探るが、奇妙な相談をもちかける市民たちが次々と邪魔に入り…
実験的手法で悪夢のような不条理を紡ぐ問題作。
わたしたちが孤児だったころ
上海の租界に暮らすバンクスは、十歳で孤児となった。貿易会社勤めの父と反アヘン運動に熱心だった美しい母が相次いで謎の失踪を遂げたのだ。
ロンドンに帰され寄宿学校に学んだバンクスは、両親の行方を突き止めるために探偵を志す。やがて幾多の難事件を解決し名声を得た彼は、戦火にまみれる上海へと舞い戻る。
わたしを離さないで
介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく…
忘れられた巨人
遠い地で暮らす息子に会うため、長年暮らしたムラをあとにしたアクセルとベアトリスの老夫婦。一夜の宿を求めた村で少年を託された二人は、若い戦士を加えた四人で旅路を行く。竜退治を唱える老騎士、高徳の修道僧・・様々な人に出会い、時には命の危機にさらされながらも、二人は進んでいく。