カバ子の日記

生きていてくれるだけで嬉しい

【ぼくは勉強ができない】山田詠美 新潮文庫

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タイトルを見ただけで読んでみたくなる本です。

ぼくは勉強ができない。

こう言い切るぼくは高校生で、女性にはモテるらしい。

いったいどういう子なのかとても知りたいと思いました。

実際に読んでみて私は、ぼくやその家族が大好きになったし、内容も面白いものでした。

もっと若い時に読んでおきたかったなぁと心底思います。

【ぼくは勉強ができない】作者 山田詠美

1959(昭和34)年、東京生れ。明治大学文学部中退。1985年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞を受賞しデビュー。1987年に『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、1989(平成元)年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、1991年『トラッシュ』で女流文学賞、1996年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、2005年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、2012年『ジェントルマン』で野間文芸賞、2016年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書に『ぼくは勉強ができない』『学問』『血も涙もある』『私のことだま漂流記』などがある。

山田詠美 | 著者プロフィール | 新潮社

【ぼくは勉強ができない】あらすじ

ぼくは確かに成績が悪いよ。でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ――。17歳の時田秀美くんは、サッカー好きの高校生。勉強はできないが、女性にはよくもてる。ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪い。この窮屈さはいったい何なんだ! 凛々しくてクールな秀美くんが時には悩みつつ活躍する高校生小説。

【ぼくは勉強ができない】感想

※ちょっとだけネタバレがあります。

ぼくは勉強ができない

登場人物の1人脇山君が読んだ瞬間、ちびまる子ちゃんの丸尾君に思いました。

個性って不思議。

誰一人として同じ個性なんてないけれど、似たようなタイプがそれぞれのクラスにいたりします。

 

小学の頃の先生、読んでいても腹が立ちます。

 

そしてこの状況、なんだか見た事ある!!

当時私のクラスでもあったような…

先生は質問に答えない、そして逆質問。

理不尽に怒られるけれど、親からは「先生のいう事は絶対正しい」と言われていたことが多かったなぁと当時を振り返って思います。

 

それを主人公は「おかしい」と思う事は、口にして言うからとても眩しく思いました。

あなたの高尚な悩み

大人になった今だから分かる言葉だと思うのですが、この言葉が好きです。

人の感情は千差万別で例として取り上げることなど出来ないものだ

どんなに尽くされた言葉でも自分の気持ちとはどこか違うのだ。それは、人間が違うからだ。それでも自分でない人の書いた恋の話を人々は求める。いったい何を確認したいのか。

ここでは恋愛の話の事だったと思うのですが、人の感情を分かろうとすればするほど、複雑で分からなくなるのです。

自分の事でさえ、私は分からなくなります。

 

主人公はまだ高校生。

 

なのにとても大人びたしっかりしている子で世の中のおかしいと思う事を理由も含めて言えるのがちょっぴり羨ましく、そして読んでいて気持ちが良かったです。

 

「雑音の順位」と「健全な精神」の章の感想を書きたかったのですが、メモ書きが汚すぎて読めない( ;∀;)借りていた本も返却してしまったので、この部分の感想はありません。

○をつけよ

物語ではありますが、なんでそんな風に思えるの?という位しっかりしている主人公。

母親でもある私は、主人公の母親にも興味が湧きました。

 

ある人に対しても感想を述べる事は出来るけれども、それ以外の事に関しては権利を持たない。こんな風に思えるって凄くないですか?

事実を自分勝手に解釈してそれの確認を他者を使って行う人々。

自分はこう思う。

そのことだけでは満足できずに人の賛同を得ようとする種類の人間たち。

その人々は自分の論理を組み立てた結果以外の物を認めない。

どんな論理にも隙間があるのを信じようとはしない。

隙なく組まれたものがある時には呆気なく崩れてしまうというのを知らないのだ。

読んでいて恥ずかしくなりました。

だって事実を自分勝手に解釈することって普段何気なしにしている気がしたから。

どうして色んな方向から見ようとしないんだろう?って後から考えたりはするんですけど…こういう考え方もあるよなという事をしてこなかった。

 

三者の「やっぱりねぇ」という言葉

 

余計なお世話で何でも白黒つけたがる人達。

私もそんな目で見ていた事があるかもしれません。あったかもしれません。されたかもしれません。

分かってもいないのに、私は前から分かってたよ。ってな顔を普通にするし、向き合ってもいなかったのに、正論だけを言う大人。

そういった人々は今でもとても多いし、人が人を裁く事なんて出来ないということだけ解っていればいいというアドバイスをくれる先生がいるって主人公は幸せだなぁと思いました。

私が出会った先生達にそんなアドバイスをくれた人はいませんでした。

主人公が自分なりの価値判断の基準を作っていこうと決心した所を読んで、私も出来たら高校生に戻ってやり直したいと思ってしまいました。

時差ぼけ回復

人間とは本来25時間を1日の周期として生きる動物だという説があるのだそうです。

それを24時間に合わせていくとどうしても1時間の時差が出てきます。その1時間をどう過ごすか?

難しく考えずに、要領よく時間をつぶせる人もいますが、どうしてもそれが出来ない人もいます。そういう神経質な人達が不眠症になったり、日常生活に支障が出たりするのだそうです。

私は深く考えず今まで生きてきたので(1時間増えるの?ラッキー)といった感じで過ごしてしまいますが、そうでないと他人が持たない自分だけに与えられた1時間を深く考えば考えるほど、恐ろしいほど孤独を感じてしまうのかもしれません。

賢者の皮むき

人には視線を受け止めるアンテナがついてくる。他人からの視線、そして自分自身からの視線。それを受けると人は必ず媚びという毒を結晶させる。毒をいかにして抜いていくのか、僕はそのことを考えていかなくてはならない。

 

物事に対して、早く気づける人は頭が良い人だと私は思っています。

残念ながら私は若い頃それに気づく事が出来ませんでしたが…

勉強が出来てもここに気づけないと残念だなぁと思うのですが、主人公が好かれる理由は気づきとそれにもがいて必死に向き合っているという事なんだと思います。

世の中の全てのものには皮がある。まわりから覆われ、内側から押し上げられて出来上がるおりのような皮だ。その存在に気付かない人もいる。そして気づいてしまう人もいる。ぼくは今、自分のそれに気づいた慌てている。

ぼくは勉強ができる

主人公は高校3年生。

将来に向かって進路を決める大切な時期です。

勉強の事もそれ以外の事も。

生きる事に対しても。

私が学生の時に読みたかったこの本を高校生の娘はまだ読もうとしないけれど、近い将来この本を自らが手に取って読んで欲しいと思います。

 

私が今感じるようなことはないだろうけれど、何か娘の心に届くものがあると信じて。