迷いなく手に取った本は、ハズレなしで読めている気がします。
タイトルがひらがな二文字というだけで、「ん?」って思ってしまいます。
今回の本は「ひと」「まち」に続く3作目なんだそうです。
最初に手にした【いえ】ですが、前作を読んでいなくても全く問題ありません。
ただ続きが気になるのではなく、前作が気になり「ひと」「まち」も今すぐにでも読んでみたいという思いがあります。
【いえ】作者 小野寺史宜
千葉県生まれ。2006年「裏へ走り蹴り込め」でオール讀物新人賞、08年「ROCKER」でポプラ社小説大賞優秀賞を、そして2019年に『ひと』で本屋大賞第2位を受賞。著書に『ホケツ!』『家族のシナリオ』(小社刊)『みつばの郵便屋さん』『ひりつく夜の音』『近いはずの人』『リカバリー』『本日も教官なり』『それ自体が奇跡』『夜の側に立つ』『ライフ』『縁』などがある。
【いえ】のあらすじ
案外面倒な兄なんだな、おれは──
社会人三年めの三上傑には、大学生の妹、若緒がいた。仲は特に良くも悪くもなく、普通。
しかし最近、傑は妹のことばかり気にかけている。傑の友だちであり若緒の恋人でもある城山大河が、ドライブデート中に事故を起こしたのだ。後遺症で、若緒は左足を引きずるようになってしまった。
以来、家族ぐるみの付き合いだった大河を巡って、三上家はどこかぎくしゃくしている。
教員の父は大河に一定の理解を示すが、納得いかない母が突っかかり、喧嘩が絶えない。
ハンデを負いながら、若緒は就活に苦戦中。家族に、友に、どう接すればいいのか。思い悩む傑は……。
【いえ】の登場人物
三上傑(みかみすぐる)(25)
いえ 小野寺史宜 特設サイトより引用
おれ。傑はすぐると読む。傑物、豪傑、の傑だ。
残念ながら、おれは傑物でも豪傑でもない。どちらかと言えば凡人だ。
どちらかと言わなくても凡人。
ハートマート両国店に勤めて三年めの社員。
江戸川区平井に住んでる。江戸川区だが荒川沿いだ。
三上若緒(みかみわかお)(22)
いえ 小野寺史宜 特設サイトより引用
おれの妹。就職活動中の大学生。
特に仲のいい兄妹ではない。悪くもないだけ。普通だと思う。
でも最近は、いつも妹のことを考えてる。
雨降ってきたけどあいつ傘持ってるかな。階段を急いで下りようとしてないかな。
そうせざるを得なくなったのだ。事故に遭ったから。
城山大河(しろやまたいが)(25)
おれの中学時代からの友だちで、若緒の恋人。
ドライブデート中に強引な右折をして対向車と衝突事故を起こし、助手席にいた若緒に怪我を負わせてしまった。
若緒が左足を引きずるようになって以来、おれは大河とまともに話してない。
三上達士(みかみたつし)(55)
おれの父。墨田区にある都立高で教頭を務めてる。
朝のごみ出しを忘れたとか、夜のフロ掃除を忘れたとかで、母には文句を言われがち。
父は大河を受け入れてる。少なくともおれの目にはそう見える。
おれも、教師である父が、あの野郎ふざけやがって、娘を傷ものにしやがって、みたいなことを言ったら、それはちょっといやだな、と思ったはずだ。
三上春(みかみはる)(52)
おれの母。専業主婦。
はっきり言うと。母は大河を受け入れてない。
おれが小さかったころは大河を好きだった母。
若緒が付き合いだしたころもまだ大河を好きだった母。
それがあの事故で変わった。大河への期待は一気に霧散した。
福地美令(ふくちみれい)(25)
おれのカノジョ。阿佐ヶ谷に住んでる。ふりかけをつくる会社の三年めの社員。
おれがスーパーの社員だからといって勝手に注文を増やしたりすることはできないが、美令の会社のふりかけは、ついつい商品棚のいい場所に置きたくなる。
【いえ】周辺の地図
いえ 小野寺史宜 特設サイトより引用
【いえ】の感想(ネタバレあり)
特設サイトに地図まで書かれてるなんて、なんて分かりやすいんだろう。
とても親切なサイトだと思いました。
さて本題の【いえ】の感想ですが、私は主人公の親と同年代。
家族構成も同じ夫、私、息子、娘の四人家族です。
前作を読んではいませんが、なんとなく価値観も同じような気がして余計にのめり込んでしまいました。
けれども、母親として読まず主人公そのものとして読みました。
妹を想う兄の気持ち。
妹想いの兄。
自分が友達を妹に紹介したことによって、今回の事故が起きたと自分を責めている所。何も悪くない妹がなぜ?という複雑な気持ち。
「許す」「許さない」という問題ではないけれど、「たられば」とつい考えてしまったり…とまぁ私と考えること一緒やん。と思ってしまいました。
この時点で精神年齢は主人公と変わらないのか..とまた余計な事を考えてしまう。
ドラマや映画を客観的に見ると人の気持ちが分かったりするので、他人の事にはついアドバイスしたくなるくせに、自分の事(家族も含めて)となるとまるでダメな私。
家族が感じる想いはそれぞれで近くで一番遠い気がします。
皆自分が悲劇のヒロインみたいに思うけれど、誰もが同じように悩んでるってこと。
それぞれに辛さや苦しみがあるんですよね。
今回の【いえ】ではやたら妹がしっかりしている。
心身共に一番傷ついているのに、人が気を遣うよりも、まだその上をいく。
こういう所は娘と似ていると思いました。
母が受け入れられない気持ちも、家を出て帰って来ない心情もわかるわかる。
やるせないんですよね。母親からしたら(なんのために…)ってなるんですよ。
言ったって仕方のないことなんて100も承知の上で。
誰よりも分かってるんです。
それを100%受け止めて貰えないっていうか、これは自分の気持ちでもあるからっていうなんとも言えない辛さがせつないですね。
なんで、作家さんは人それぞれの気持ちが分かるんですか!!って思います。
私は自身の事すら分からないのにって思う時があります。
本の良い所は、誰にも見せたくない自分の深い奥底にある気持ちを、(そうそうそういうこと)文章で表現してくれること。
それで、ちょっと気持ちが楽になるんですよね。
分かってくれたって。
私にはそれが出来ません。
言葉でも文章でも。
それでも家族の事を大切に思っているし、考えてはいるんですよね。親って。
当たり前のように過ごしていた毎日が事故や病気で一瞬にして崩れ落ちることって誰にでも起きうること。
それをきっかけに、日常のちょっとした出来事ほんとうに、何でもない事が積み重なってより悪い方向にいってしまう。
こういう時に人間の弱さが出てしまいますが、そういった経験をすることでまた、乗り越えられた時は今まで以上に人に優しくできる強くなれる、そう思っています。
人間関係は難しい。親子でも兄妹でも、友だちでも。
主人公(兄)の正直すぎるところがまたいいですね。
「ひと」「まち」を最初に読んでいたら周りの人物に対する見方がまた違った感じになるのかな。気になってしまいます。
ここは主人公ではなく、母親というかおばちゃんの立場から。
例えば、隣に住む郡君が自転車のパンクを修理する仕方を主人公に教えて貰う所なんか、頭が良いから教えることなんてそんなになくて、理屈やしくみが分かれば自分で難なくこなしてしまう。
頭が良い人ってそうなんですよね。
だから何でもできてしまう。
これは羨ましいって思いますね。
「ひと」に郡君が出てくるのかな。
あ~気になってしまいます。
「まち」なんだから家の近所の喫茶「羽鳥」のこととか出てくるんだろうか。
最初の部分での喫茶「羽鳥」のクリームソーダは飲んでみたいし、ピーナッツも食べたい。
こちらも早く読んでみたいです。