カバ子の日記

生きていてくれるだけで嬉しい

【詐欺師と詐欺師】家族愛を考えた時 川瀬七緒 中央公論新社

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人の気持ちをその人の身になって考えた事はどれだけありますか?そういわれたら、(ちゃんと考えてるよ)と思うのですが、実際はそうではないと思います。

相手の事を知ろうとすると、ものすごく深くて時間もかかります。自分の時間を割いてその相手と向き合う事になります。日々忙しい生活を送っていると、その時に向き合って話す事は少ないと思うのです。

結局人の気持ちという者は本人でないと分からないものですが、それだけ相手の事を知ろうとすると時間がかかるもの。

それが親子だったら?

作者紹介 川瀬七緒

1970年福島県生まれ。文化服装学院服装科・デザイン専攻科卒。2011年『よろずのことに気をつけよ』で第57回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。著書に『法医昆虫学捜査官』シリーズ、『フォークロアの鍵』『テーラー伊三郎』など。

あらすじ

海外で荒稼ぎして帰国した詐欺師の藍は、ある政治家のパーティーで知り合ったみちるに興味を抱く。みちるは親の仇を捜しており、そのために金がいるという。仇とは、世界的企業に成長した戸賀崎グループ筆頭株主の戸賀崎喜和子。隙だらけの復讐計画を聞いた藍は、みちるに協力することになるが……。稀代のストーリーテラーが贈る、衝撃のラストにご注意を。

詐欺師と詐欺師 -川瀬七緒 著|単行本|中央公論新社

【詐欺師と詐欺師】

読みたくなったきっかけ

詐欺師そのものに興味はなかったのですが、親子の業にとらわれた女性達の復讐「家族の重さ」を描いたという作者の言葉で(詐欺師とどう関係があるのだろう?)と興味が湧きました。

 

物語の主人公は海外で荒稼ぎし帰国した詐欺師の藍。

美人で頭が切れる人物で後にみちるのパートナーとなる。

もう一人は、世界的企業グループの筆頭株主である戸賀崎喜和子により、両親が自殺に追いやられたと信じ、復讐心を抱いている詐欺で金を稼ぐみちる。

 

2人は所在すら分からない喜和子を追うのですが…

 

第一章 嗜虐は黒く縁どられる

藍がみちるに忠告としていくつか述べています。

これは、詐欺師でなくても言えることだと思います。

 

忠告その一:物事を過小評価してはいけない。

忠告その二:いかなるときも客観的視点を徹底させること。

忠告その三:物事を他方面から考え尽くす癖をつけること。

 

忠告その一:物事を過小評価してはいけないのは、グサリと胸に響きました。

物事に対して、いつも頭に浮かんだ「思い付き」で行動していた私。

もし私にこの忠告一が少しでもあればと後悔する事が幾つもあるからです。

 

「利用可能性バイアス」という言葉があります。

これは、記憶から呼び出すものが簡単な方が、そうでないものに比べたら実際に起こる確率が高いと思ってしまうこと。

 

具体的に言うと、ネット検索で調べた時に最初に出てきたサイトに書かれた記事を信用してしまうということ。

一番初めに出てきたから、これが正しいと思ってしまうんですよね。

そうではなくて、もっと以前に経験した古い内容も引き出してきてそれも含めて考えてみるという事をしないといけないという事です。

 

忠告その二:いかなるときも客観的視点を徹底させることも忠告一につながっているかもしれません。

上記の様に、古い記憶を引き出してくるにはどうすればいいのか?

それは、自分自身についての客観的な記録を用意すること。

記録があれば、冷静に考える事が出来るので、過剰に落ち込むことがないかもしれません。

 

忠告その三:物事を他方面から考え尽くす癖をつけることもそうです。

過去には戻れませんが、この忠告は私に対しての忠告だと思って読みました。

 

第二章 探偵と詐欺師

パートナーとなった藍とみちる。

みちるが依頼している探偵に会うため藍と共に探偵事務所へと行くのですが、探偵とやり取りする藍が、かっこいいです。

知識も必要ですが、物事の裏側を考えながら言葉を選ぶ事なんて普通はしないし、見ている視点が違って、探偵をやり込める所も読んでいてスッとしました。

 

みちるとパートナーになったものの、みちるを分析する藍がまたカッコいいんです。

初めはなぜパートナーなんかに?と思いましたが、理由が分かってきます。

 

 

物理的に満たされても、精神面が空っぽならお金はなんの意味ももたない

 

これは、いつの時代でも変わらない事なのだと思います。

 

口では嫌いと言っていても、精神的には支えにしていたり、自分と向き合ってくれた人には極端に美化してしまう人。

 

愛とは何か?

満たされるとはどういう事なのか?

愛情の記憶は塗り替えられるのか?

そんなことを考えてしまいました。

 

第三章 ピレウス・ヴィラ・キワエナ

目次を見た時、なんじゃこれ?と思ってしまいました。

読んでいくと意味は分かったのですが、文章だけで想像するピレウズ・ヴィラ・キワエナは南国を思わせ、いますぐにでも旅行に行きたくなる感覚になりました。

 

ここで、藍がみちるに自身の生い立ちを少し話すのですが、そういう両親だったのね。と妙に納得してしまいました。

 

愛って深いです。

本物の愛って何なんでしょう。

 

人の心というのは、複雑で不思議です。

ここでもまた、藍のみちるへの忠告があります。

「好き嫌いで物事を判断していると、視野がどんどん狭くなる」

「人を簡単に信用してはいけない」

あ~これも分かります。無意識にやっているかもしれません。藍がみちるにする忠告はなんだか私への忠告のように思えました。

第四章 罠なのか偶然なのか

新聞で【詐欺師と詐欺師】はキャラクターの衣食住などティテールが丹念に描かれているのも物語に没入出来る。と書かれてありました。

作者も「持ち物や食べ物など全てがその人間をつくりあげている」とおっしゃっていました。

実際に本を読んでいると、物語に没入出来るし何といっても藍の食に対する知識が凄い!!海外で仕掛けてきたスケールが大きすぎる詐欺をしてきた分、知識量も多く、実際に食べてみたくなるので不思議です。

分かってて読んでいても、誰も藍を詐欺師だなんて気づかないでしょう。

 

ここからは話がトントン拍子に進んでいきます。

偶然が重なりすぎると、慎重になってしまいます。小心者の私は(私やったらやらない)とか(え~)とか思いながら読み進んでいきました。

 

第五章 雁字搦めの鎖

善人にも悪人にも不幸は平等に訪れる

う~ん、平等という所がしっくりこないけれど、どちらにも不幸が訪れることは間違っていないと思います。

どんなに正しい行いをしていたって、人生何があるか本当に分からないので。

 

お金がないと生活は出来ません。いつの時代でも生活できるお金がないと不安です。

けれども、愛する人

自分の大切な人がいないと、いくらお金があってもそれは違うんですよね。

どんなにお金を使って贅沢な暮らしをしても、心が満たされる事はないんだと思います。

これは、過去にあるどの本を読んでも同じ事が書かれていると思います。

人間はいつの時代に生まれても、そこは同じなんだと思います。

 

そして人の気持ちも不思議です。

時間が経てば変わることもあるし、人に会って変わる事もある。その時々の状況でどうなるかは誰にも分からないのです。

 

最後はドキドキしました。黒幕は一体???

 

詐欺師と詐欺師の感想

久しぶりにサスペンス小説を読みました。

ハラハラドキドキしました。

後味は良くはないです。読み終わった人がどう考えるか?

(きっとこうなるだろうな~)といった感じです。

作者と私の想像はどこまで、似ているんだろう?

それとも全く違うのかなぁ?

今まで家族とは「こうである」と思っていた事が実は正解なんてなくて「永遠のテーマ」だったんだという事に気づかされたのかもしれません。