カバ子の日記

生きていてくれるだけで嬉しい

【れんげ荘】群ようこ あらすじとネタバレ感想 ハルキ文庫

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以前「働かないの」という本を読みましたが、実はシリーズもので「れんげ荘」が始まりだったので、今回「れんげ荘」を手にしました。

 

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私はある出来事がきっかけで体調を崩したのですが、改めて人生について考えています。

その中で「れんげ荘」と出会い気持ちがやわらいでいます。

 

【れんげ荘】あらすじ

月10万円で、心穏やかに楽しく暮らそう!!

キョウコはお愛想と夜更かしの日々から解放されるため、働かずに生きていける貯金額を貯め「貯金生活者」として有名広告代理店を45歳で早期退職します。

生活習慣がガラリとかわり、都内の安アパートに引っ越したキョウコは、60歳すぎのおしゃれなクマガイさん、外国人大好き職業「旅人」のコナツさんなど、個性あふれる人々と暮らしていきます。

 

【れんげ荘】作者:群ようこ

1954(昭和29)年、東京都生れ。1977年日本大学芸術学部卒業。

本の雑誌社勤務時代にエッセイを書き始め1984年『午前零時の玄米パン』でデビュー。

その後作家として独立。

『トラちゃん』『鞄に本だけつめこんで』『膝小僧の神様』『無印おまじない物語』『ネコと海鞘(ほや)』『またたび回覧板』『飢え』『ヤマダ一家の辛抱』『ビーの話』『小美代姐さん花乱万丈』『きもの365日』『平林たい子伝 妖精と妖怪のあいだ』『かもめ食堂』『しいちゃん日記』『ぢぞうはみんな知っている』『おんなのるつぼ』『れんげ荘』『パンとスープとネコ日和』『おとこのるつぼ』『ゆるい生活』『じじばばのるつぼ』『うちのご近所さん』『子のない夫婦とネコ』など著書多数。

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【れんげ荘】ネタバレ感想

まず最初に思い浮かんだのは、【家事か地獄か】の著者、稲垣えみ子さん。

キョウコと似ている…

まさにキョウコを地で行く人がリアルな日常を描かれているのを思い出しました。

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稲垣さんは今までの経験と執筆という商売道具があるので、全く働いていないとはいきませんが、それでも考え方はキョウコと似ているなと思いながら読みました。

 

キョウコはどんな主人公なのでしょうか。

 

以前は大手広告代理店に勤め、都内にある庭付き1個建ての実家から通う毎日。

45歳なので、給料もそこそこ高給で定年まで働けば退職金もかなりの額になるはず…だったのですが、45歳で仕事を辞めてしまいます。

 

しかもやる事が極端。

 

多くの人ならまず仕事を契約社員にしてもらうかアルバイトをして徐々に様子をみていく…といった感じだと思いますが、そうではなくきれいさっぱり辞めてしまいます。

しかも「働かない」という選択。

おまけに引越し先は、安アパートでほぼ何も持たずに1人で暮らす生き方。

今までの暮らしと正反対なのです。

 

読んでいてハラハラしましたが、気持ちが分からないわけではありませんでした。

誰もが一度は、何もかもが嫌になってしまう事ってあると思うのですが、キョウコの場合も精神的にも体力的にも疲れ切っていたんだと思います。

 

真面目な性格で余計な事を考えてしまう。

そうでない人をみてそうなりたくても出来ない自分。

母親との確執。

父親は家のローンを払うため、働き詰めで結局ローンを完済と同時に亡くなってしまいます。

今まで働いた事がなく、自分中心で他人軸の母親との生活が苦痛で父親の死も母親が原因であると思っているキョウコは、そんな母親とも距離を置くために1人暮らしをします。

 

そこで決めたのがこの本の題でもある古アパート「れんげ荘」なのでした。

れんげ荘の家賃は月3万。

昔ながらの敷地の広いお屋敷2軒に挟まれた2階はうっそうと樹が生い茂っているなかにまぎれ、いかにも忘れ去られて建っている風情ある建物。

薄茶色の外壁には黒いスプレーで何やらわからないマークがいたずら書きされてあります。

トイレとシャワー室は共同で、小学校のプール横にあるものを一畳分持ってきたような感じ。

共同トイレとシャワーのみのアパートはいくら安いとはいえ、私には出来ません。

キョウコのその行動力には驚かされてしまいました。

 

キョウコにはマユちゃんという高校教師をしている親友がいるのですが、とてもいい友達でキョウコの「真面目」な考え方に寄り添ってくれています。

 

そんなマユちゃんにキョウコは、自分が勢いでやってしまった事とはいえ「無職」でいることに罪悪感を感じていることを打ち明けます。

またお隣に住んでいるクマガイさんは「れんげ荘」に何十年も住んでいて退屈していないのかと知らないうちに「クマガイさん」と「自分」とを比較したりもしているのでした。

 

それを聞いていたマユちゃんがキョウコにこういいます。

(クマガイさんは)「退屈しないことはないでしょうけど。若い頃に相当遊んでたんでしょう。もうそれでやり尽くしたんじゃない。細かいことはわからないけど、どこか吹っ切れいている部分があるんだと思うな。

あなたはまだ欲望があるのよ。精神的なまじめな欲望が。それは全然悪いことじゃないとは思うけど、邪魔になるときもある」

「まじめは欲望?」

「そう。例えば誰かみたいになりたい、とか具体的な人じゃなくても、頭の中に描いているかっちりした鋳型みたいに、がんばって自分をはめようとしているんじゃないのかな。どこにいても。その人にふさわしいモデルケースなんて誰も教えてくれないの。そんなものはどこにもなくて、自分の頭で考えて自分になるしかないのよ」

 

こんな素晴らしい意見を言ってくれるマユちゃんにキョウコは励まされ、また毎日丁寧に入れるお茶を飲む贅沢や、物事は何でも自分で決めないといけないこと。ちょっとした事に生きている実感がわいてくるのでした。

 

家族がいてもいなくても同じ。

日々のモヤモヤした気持ちやこれでいいのかなぁという事がまじめなキョウコ目線で書かれています。

真面目な人は、ちょっとした出来事にすぐ反応しその全部を受け止めてしまいがち。

それでもどんな事でも過去は戻ってこないし、悩んでも仕方がないということ。

 

真面目な性格な方に読んで欲しいなぁと思う本でした。